力試しと発見とやりたいこと

「その時、何をして、何を思ったのか」を綴る僕の留学記。毎日更新予定。ありのままの様子を書きたい。インドネシアは、人々の生活の様子や習慣ひいては宗教との関わりを現地から自分の目で見て、味わって、体験したい。

トラジャの葬式と水牛と死生観

トラジャ2日目

今日はトラジャに来た最大の目的である儀礼があるとのことで早速参加してきました。Upacara Pemakaman(お葬式)です。

かなりお金持ちの家計のお葬式らしく豪勢で今日が2日目だったそうです。全部で4日間取り行うそう。

 

香典代わりのタバコを購入してから到着
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水牛は故人を死後の世界に運ぶ乗り物として生贄になります。
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水牛にもランクがあるようで

  1. サレゴ  白ベースに顔に黒ぶち 一頭400万円以上
  2. ボンガ  白ベースに体に黒ぶち
  3. バレアン 角が長め、基本メス
  4. トディ  額と目の周りが白
  5. プドゥ  全身黒・白
  6. サンバウ 奴隷の牛、数合わせ

 

上の写真はおそらくトディクラス。

トディ以上を最低1匹は用意しなければならないルールもあるようです。

 

故人の社会的地位で葬式の際に必要な水牛の数が変わります。

庶民でも10頭が相場らしいです。高い階級になると24匹が最低数。皇族クラスだと32頭は必須になるようです。

 

真っ黒なので多分プドゥ

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本場のトンコナンは水牛の角が飾られています。
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豚も同じく生贄に
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来客者が休憩するスペースも個人を祀っているトンコナンも葬儀が終われば全部取り壊します。
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また別の葬式の時には全て建て直し。一人の葬儀に莫大な人員と費用が掛かっています。
 
豪華なトンコナンラッシュ
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既に生贄の豚が用意されていました。
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今回の主役の故人の方です。
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タバコ1カートンをご家族の方にお渡ししました。
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155,000ルピア(1300円くらい)
 
どんどん水牛が連れられてきます。
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真ん中奥で紫の服を着た女性が伝統的な楽器を演奏しながら
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赤い服の人を先導にお客さんが歩いてきます。
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故人の方が祀られている向かいのトンコナン
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今回の葬式で水牛や豚を寄付した方たちだそうです。
 
相当な生贄を要するのでいくら裕福な家系でも一家族でまかなうのは到底困難。
生贄も送られた家族には後に返すというサイクルが出来上がっているので、こうした盛大な儀礼が絶えることなく続いているそうです。
 
後に寄付した方の発表があり、その豚や水牛には寄付した方のイニシャルがカラースプレーで刻まれていました。
 
生贄の豚を男性陣が囲んでちょっとした舞踊
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その後は女性を中心にお客さんがいるトンコナンへ
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軽食とコーヒーや紅茶、タバコでおもてなし。
 
この一連の流れを一サイクルとすると、これを繰り返します。
この次の段でお客さんの一人としてトンコナンに招いてもらえました。
流石にその際には記録を収めれませんでしたが貴重な経験ができました。
 
今日は葬式の儀礼の2日目で基本はたくさんのお客さんをもてなす日。
水牛や豚を本格的に生贄として召すのは3日目になるのですが、今日は2頭だけ生贄とするようです。
 
一頭の水牛が

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ほんの一瞬で
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この先は少し自粛。

後日、「閲覧注意」の形で別途投稿しようと思うので見たい方だけどうぞ。

基本は一回のみ。あとは弱るまで待つのみです。タフな水牛は30分も暴れまわるそうです。

 

他にも生贄になった豚はその場で内臓を処理されて焼かれていました。

この肉は後に家族やお客さんで分けられます。ちなみに今日の晩ご飯として出てきました。

 

こうした生贄はただ「魂を運ぶためのもの」ではなく、儀礼を通して「家族や近隣の方にふるまうこと」も一つの目的になっています。

生贄の数に最低数の決まりはあれど、あくまで最低数でいくらでも超えて構いません。

地位の高い方の葬式だと100頭以上の水牛が生贄として葬られることもあるそうです。

 

今回葬式があげられた方は、トラジャ人にとってはまだ死んでいません

この儀礼が終わり、棺が埋められて初めて死の世界に行ったことになります。

 

トラジャが特殊なのは一般的に「亡くなった」と言われる状態は、「眠っている、病気の療養中」の状態と認識されています。

そのためトラジャの人にとっては今日の葬儀の方もまだ眠っているのです。

 

それだけでなく、亡くなってからも一定期間同じ家で生前と同じように一緒に生活します。ホルマリンで腐らないように加工して食事、着替え、お祈りなども変わらず一緒に過ごします。

 

必要な水牛を買う資金調達に時間がかかるという現実的な理由もありますが、家族が悲しみと向き合う時間だとも言われています。

トラジャ族の葬式は決して悲しいものではなく、楽しいものだそうです。

故人の方の最期に畏敬の念を示し、周りの人と食事を共有し、幸せを共有するものだと捉えられています。

 

そんなトラジャの特殊な葬式の儀礼死生観を知識として少しは有していましたが、実際に自分の目で見て、現地の人から話を聞くことができて大変貴重な時間を過ごせました。